猫エイズの「症状」や「どの様な病気なのか」を正しく理解している方はまだまだ多くない状況です。
猫エイズと言う名前から「すぐに死んでしまうのでは?」「可哀そうに」と言う様な、とても重篤な病気と言うイメージがありますが、実際にはちょっと違っています。
確かに発症してしまうと今の医学では完治ができない恐ろしい病気である事は間違いありません、ただ間違ったイメージが先行して偏見が生まれている現状を変えたいと思いこの記事を書いています。
正しい情報を知ってもらう事が悲しい偏見をなくすはじめの一歩と信じて発信していきます。
猫エイズとは?
猫エイズとは「猫免疫不全ウイルス」に感染する事で起こる症状の事で、正式名称が「猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)」と言います。
猫免疫不全ウイルスによって免疫機能を破壊され免疫力が下がってしまう事で、健康な時であれば病気の原因にならない様なちょっとした病原体にも反応してしまうようになります。
どの様な病気なのか?どう防げばいいのか?まずは知る事がはじめの一歩です。
猫エイズの感染経路とは?
猫エイズに感染してしまう原因としては大きく分けて2つあり、既にウイルスを持っている猫との接触(水平感染)とウイルスを持っている母猫から生まれた子猫(垂直感染)があります。
ただ猫との接触で感染すると言っても猫免疫不全ウイルスはとても感染力の弱いウイルスの為、空気感染はしませんしグルーミングでの感染もゼロでは無いものの多くない状況です。
交尾やその際のネックグリップ、喧嘩による咬傷が原因となる事が多いようです。
母子感染も母猫がウイルスを持っているからと言って必ず子猫に感染するわけではないようです。
ただこれ以上、感染の可能性を広めない為にウイルスを持っている猫には不妊・去勢手術をしてあげるのが一般的です。
猫エイズの検査とは?
動物病院で血液検査(抗FIV抗体スクリーニング検査)によって15分ぐらいで猫エイズの検査をしてもらう事ができます。
ウイルスに感染すると体の中で抗FIV抗体と言う物質を作り、その抗体がウイルスをやっつけようとして戦います。
この抗体ができているかどうかを調べる事でウイルスに感染しているかどうかを検査するのです。
ただ注意しなくてはいけないケースがいくつかあるので具体的に見ていきましょう。
感染直後は反応が出ない事もある
ウイルスに感染してもすぐに抗体が作られる訳ではありません。
抗体ができるまで1~2か月かかる事もあるので感染直後に検査をした場合、本当は感染しているのに陰性と言う結果が出てしまう事があります。
ワクチンを打った後は反応が出る事もある
FIVワクチンがありその予防接種を受けていた場合は人工的に抗FIV抗体が出来ています。
その状態で検査をすると当然、感染していないのに陽性の反応が出る事になるので、外注検査(FIV抗原を検出する検査)を行うと言う方法もあります。
子猫は感染していなくても反応が出る事がある
母猫がウイルスに感染していたりFIVワクチンを受けていた場合には体内にFIV抗体を持っている事があり、胎盤や初乳を通して子猫に抗体が移行している事があります。
この母猫から受け継いだ免疫機能が子猫から自然消滅するのが生後6か月頃と言われており、生後6か月以降に検査するのが理想とされています。
ですのでもし子猫の検査結果が陽性だったとしても、生後6か月以降に再検査をする必要があると言えます。
猫エイズはうつるのか?
名前のイメージから「人にうつる」と勘違いしている方が多いのですが、今の所は人や他の動物への感染報告はありません。
同じ様に人のエイズ(HIV)が猫にうつる事もありません。
ネコ科の動物にはうつる可能性があるようですが、一般的には接する機会は無いと思うので気にする必要はないでしょう。
猫エイズを治療・予防するには?
本格的な症状が出る前の段階では免疫力を増強させる働きを持つインターフェロンを投与する治療が行われる事もあります。
免疫力を高める事で本格的な発症を遅らせる効果が期待されていますが、嘔吐や発熱などの副作用が出る事もあります。
残念ながら発症してしまうと今の医学では治す事ができない病気ですので、症状に合わせて症状を抑える対症療法が中心になります。
一番の猫エイズ予防策は完全に室内で飼い他の猫との接触をさせない事です。
猫エイズのワクチン接種も可能ですが実際にはその効果に懐疑的な見方があったり、副作用が心配されているので私としてはあまりグイグイおすすめはできないかなと思っています。
猫エイズはどの様に進行するのか?
猫エイズは感染後の経過に伴って3つのステージに分類されています。
猫エイズに感染するとどの様に病気が進行していくのかを見ていきましょう。
ステージ1~猫エイズ急性期~
まず猫免疫不全ウイルスに感染すると「急性期」と言われる期間が2週間~4か月程度続きます。
この期間はウイルスが活発に活動し猫の体内にできた抗FIV抗体との激しい戦いが行われています。
ここでできた抗体を検査で調べる事で、猫エイズに感染しているかわかるんですね。
ステージ2~猫エイズ無症状キャリア期~
急性期が終わると「無症状キャリア期」となり、体内にウイルスはありますが健康な猫と変わらず症状がないので潜伏期間ともいわれます。
この無症状キャリア期はその猫の免疫力や環境によって違いますが数か月から10年以上も続く事があり、猫エイズを本格的に発症しないまま無症状キャリア期を維持し寿命を迎える猫も沢山いるとされています。
ステージ3~猫エイズ発症期~
そして免疫細胞が減少しウイルスの増殖を防げなくなってくると本格的な猫エイズの様々な症状が現れる「発症期」に入ってしまいます。
いずれ免疫機能が完全に破壊され健康な時には何の問題にもならない様な細菌や感染症も防ぐ事ができず、最終的には死に至ってしまいます。
猫エイズの症状とは?
次にそれぞれのステージで実際にどの様な症状が出てくるのかを見ていきましょう。
特に猫エイズはキャリア期の過ごし方がとても重要と言われており、免疫力を下げない為にも出来るだけストレスのない生活をさせてあげたいところです。
具体的には清潔なトイレや栄養のある食事、落ち着いた環境で愛情をたっぷり注いであげる事が大切です。
それによって本格的な発症を遅らせる事ができると言われています。
猫エイズ急性期の症状
急性期の症状としては発熱、口内炎、結膜炎、リンパ腺の腫れ、下痢などが見られます。
ただ猫エイズ特有の症状ではない為、なかなか猫エイズに感染したと気付く事は難しいと言えます。
猫エイズ無症状キャリア期の症状
急性期に体の中の白血球が減少した後はウイルスに対する免疫応答が始まります。
すると血中のウイルス量が減少して自然と急性期の症状が消えていきます。
ただウイルスはリンパ球の中に潜んでおとなしくしていますが、少しずつ免疫力は低下していきます。
猫エイズ発症期の症状
この頃は免疫力の低下に伴ってウイルスの増殖を防げず様々な症状が出ます。
主な症状としては口内炎、皮膚炎、下痢などを繰り返しながらだんだん進行していき、がん、ブドウ膜炎、日和見感染などになってしまいます。
最終的に様々な感染症を発症し、衰弱して死に至ってしまいます。
りんご猫とは?
りんご猫の名付け親は捨て猫の保護活動を行っている猫保護団体「ネコリパブリック」です。
猫エイズのイメージを変えたいとの想いから、人のエイズ(HIV)のレッドリボン運動のイメージカラーである「赤」を使いつつ、猫の丸くて可愛いイメージからりんごを思いついたそうです。
りんご猫の始まりとは?
そもそもりんご猫と呼ぶ様になったのはネコリパブリックが猫エイズキャリアの猫の里親探しをしていた時に、猫エイズと言う名前がネックになり譲渡率がとても低かった事があります。
他の猫でももちろん病気のリスクは同じ様にあるはずなのに、猫エイズに対するイメージと正しい知識がない事で生まれる過剰な偏見を軽減したいと言う想いがキッカケです。
ネコリパブリックの運営する保護猫カフェの中には「店内にいる猫たちが全てりんご猫」と言う店舗もあるみたいだよ。
12月12日はりんご猫デー
人間のエイズへの偏見をなくそうという事で「世界エイズデー」が毎年12月1日に行われていますが、毎年12月12日を「世界りんご猫デー」と呼び、その由来や想いを広めると言う活動も行われています。
ネットやSNSでじわじわと広まってきていますが、まだまだ知らない方が多い状況です。
あなたもこの活動をまだ知らない人へ「伝える事」はできるかもしれませんし、12月12日はりんご猫について考える日にしてみるのも良いかもしれませんね。
りんご猫にしてあげられる事
りんご猫を見て「可哀そうに」とか「長生きできないかも」と言う方もいますがそうではないのです。
りんご猫だからすぐに死んでしまう訳ではないですし、病に伏せている訳でもありません。
元気に遊んだりモリモリご飯を食べたりしている子が沢山いるんです。
そう言った見方から偏見を生まない様に接してあげる事が大切だと思います。
猫エイズの症状などを正しく理解して偏見をなくしたい!のまとめ
猫エイズの症状や正しい知識が広まって世の中からすぐに偏見がなくなる事は難しいかもしれませんが、沢山の方が少しずつでも発信していく事で少しずつ変わっていくと思います。
・猫エイズは人にはうつらない
・他の猫への感染力は低い
・猫エイズキャリアのまま発症せずに天寿をまっとうする猫もいる
・発症しなければ普通の猫と何ら変わらない
一つでも多くの「里親との良い出会い」がありますように・・・
病気してしまうと保険には加入できなくなってしまいますので、その前に10分だけこの記事を読んでみて下さい。
コメント