多くの方が関わり、長い年月をかけて訴えてきた事がようやく一つの形を成しました。
6月12日に改正動物愛護法が参院本会議で全会一致で可決し、成立したんです。
改正ポイントとしては多くの項目があり、我々一般人のペットオーナーにも関係する項目から繁殖、販売業者へ向けた項目など多岐にわたります。
改正された内容がどの様な内容なのか詳細を確認していきましょう。
動物愛護法改正の全体像
偶然ですが令和元年にこの様な大きな改正が成立した事は後々も語られる事になりそうですね。
そのぐらい今回の改正内容はインパクトのある内容だと思います。
動物愛護法の改正内容は色々な項目がありますが全体像を見ていきましょう。
動物愛護法改正の全体像
今までも動物愛護法では業者を取り締まったり罰則を定めたりしていましたが、現状を考えるとそれでは不十分と言える内容でした。
今回改正された内容を見ると業者を取り締まるものや虐待などの厳罰化が主な内容となっていますね。
・第一種動物取扱業への登録拒否事由の追加
・第一種動物取扱業への遵守基準の具体化
・勧告・命令制度の拡充
・販売時期制限の緩和措置の廃止
・動物の適正飼養のための規制の強化
・動物殺傷罪等の厳罰化
・殺処分方法の改善
・マイクロチップの装着
動物愛護法改正の詳細
動物愛護法の改正項目だけ見ても内容がよくわからないのでこの章では具体的な内容を解説していきます。
第一種動物取扱業への登録拒否事由の追加
第一種動物取扱業とはペットショップやブリーダー、ペットオークション業者などペット産業で商売をする業者を指します。
事業をする際は地方自治体への登録制になっており、今までも一定の条件に該当する業者に対しては登録を拒否できるルールになっていました。
更に今回の改正では新たに「禁固以上の刑に処せられ、執行が終わってから5年を経過しない者」、「暴力団員や暴力団員でなくなってから5年を経過しない者」、「これらの条件は役員だけではなく使用人も対象とする」などが加わりました。
登録のハードルを上げる事で悪質な業者を減らそうという改正です。
第一種動物取扱業への遵守基準の具体化
今までは業者が遵守すべき基準が具体的ではなかった為に、劣悪な環境で猫が飼い殺し状態になっている場合でも行政が業者を規制する事ができませんでした。
今回の改正では「設備の構造や規模」「従事する従業員数」「飼養・保管環境の管理」「病気に係わる措置」「展示・輸送の方法」「繁殖回数や方法」などの項目について具体的な基準を設ける事を定めました。
これによって客観的な数字から判断して劣悪な業者への指導・勧告・命令を行い規制する事ができるようになります。
これで狭い所に詰め込んだり、無理な繁殖を繰り返したり出来なくなるんだね。
勧告・命令制度の拡充
これまでも行政が劣悪な業者に対して勧告したり改善命令を出したりしていましたが、その効果はイマイチ疑問が残る状況でした。
そんな状況を変えるべく「勧告に従わない業者を公表できる制度を設ける」「特別な事情がない限り勧告・命令について3か月以内の期限を設けて行う」などを追加し、勧告や改善命令の効力をあげる様に変更されました。
今のご時世は名指しで改善命令を出されると商売しにくくなるでしょうから効果的ですね。
販売時期制限の緩和措置の廃止
今回の改正の中で大きなテーマになっていた8週齢規制についてです。
今までも生まれてから56日間は社会性を身につけさせる為に子猫を親猫や兄弟から引き離すべきではないとの考えから、出生後56日は販売禁止という条文がありました。
ただ7年前の改正時はいつまでと言う期間を明確に区切らずに、経過措置という事で56日を49日に読み替える附則が追加されていたんです。
今回もここに関しては「子猫の方が売りやすい」と考える業者側が最後まで抵抗を示していましたが、最終的には経過措置を廃止する事となりやっと8週齢規制が成立しました。
ここは今回の改正の目玉です。
動物の適正飼養のための規制の強化
この項目は今までの項目と違い業者だけではなく一般のペットオーナーにも関係してくる項目になっています。
今までも虐待などで適正な飼養ができていない飼い主に対して行政が改善に向けた勧告・命令をする事はありましたが、さらに一歩踏み込んで立入検査が出来るようになりました。
これはここ最近「多頭崩壊」や「悪質な虐待事件」が増えている事もあり、これまで努力義務とされていた繁殖制限についても「適正飼養が困難となるおそれがある場合、避妊・去勢手術を講じなけれならない」と義務化されました。
これで多頭崩壊の減少に繋がればいいですね。
動物殺傷罪等の厳罰化
この項目も最近の残虐な事件を踏まえ、現在の罰則が何の抑止力にもなっていない事から改正されました。
殺傷:懲役2年、罰金200万円⇒懲役5年、罰金500万円
虐待・遺棄:罰金100万円⇒懲役1年、罰金100万円
これによって虐待動画やSNSの投稿などが少しでも減ってくれる事を願います。
殺処分方法の改善
一時期よりは減っているものの、まだ毎年何万匹もの犬や猫が殺処分されています。
方法としては炭酸ガスを使った昏睡・窒息死が主流ですが、炭酸ガスの濃度調節によっては昏睡状態になる前に窒息死するケースが多くあり以前から方法の改善を訴えていました。
具体的な方法については記載されていないですが国際的動向も考慮して改善を目指すとされています。
同時に殺処分自体を減らしていかないとですね。
マイクロチップの装着
今回、販売業者に対してマイクロチップの装着が義務化されました。
これによってトレーサビリティの向上や迷子の返還率を高める効果が期待されます。
それと同時に一般の飼い主の方が購入した場合は変更の届け出も義務化されることになります。
既に飼っている猫は「マイクロチップを装着するよう努めること」との記載になっており、努力義務となっています。
みんなマイクロチップ入ってる?
施行期日とは?
動物愛護法だけではないのですがこの様に法律が改正される時は「ハイ今日から改正で~す。」とはなりません。
公布されてから一定期間をあけて施行される事になります。
更に今回の動物愛護法の改正は項目によっても施行されるタイミングが変わるようです。
施行期日とは?
今回の動物愛護法の改正は2019年6月19日に公布され、基本的には1年以内に施行される事になります。
ただ一部例外となる規定もあり
「第一種動物取扱業への遵守基準の具体化」と「販売時期制限の緩和措置の廃止」に関しては2年以内の施行
「マイクロチップの装着」に関しては3年以内の施行
となっています。
業者の負担が大きい項目に関しては少し猶予を与えているんですね。
残された課題とは?
今回の動物愛護法の改正は長年訴えていた改正ポイントをほぼ反映する内容ではあるのですが、少しだけ課題が残ってしまいました。
その為、手放しでは喜べないと言うところもあります。
その事がどのような影響を及ぼすのか見ていきましょう。
残された課題
今回の動物愛護法の改正で残された課題はズバリ「天然記念物と指定された犬について、繁殖業者が直接販売する場合のみ7週齢での販売を認める」と言うものです。
天然記念物と指定されている犬種は「柴犬」「紀州犬」「四国犬」「甲斐犬」「北海道犬」「秋田犬」の6種類となっています。
口実としては「天然記念物の保存が目的」と言っていますが取ってつけた感が拭えません。
こりゃ意味が分からんな。
この様な特例が盛り込まれた理由は、公益社団法人「日本犬保存会」(会長=岸信夫衆院議員)と公益社団法人「秋田犬保存会」(会長=遠藤敬衆院議員)が日本犬を規制の対象外とする様に求めていたからです。
ホント往生際が悪いとはこの事だと思いますし、悲しい事に自分達の利益を何よりも優先したいみたいですね。
動物愛護法の改正について【2019年6月12日】のまとめ
今回の動物愛護法の改正は課題はあるにせよ今までと比べれば大きく前進したのは確かです。
ペット先進国と言われる海外の国も急に法整備されたわけではなく、多くの人の地道な努力が実って今の状況に至っています。
日本も少しずつ良い方向に向かっていると思うので、私も微力ながら引き続き発信していこうと思います。
殺処分の問題についてはコチラにまとめてあります。
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